当社は、1998年11月にISO9001の、2009年10月にJIS Q 9100の認証を取得しています。
今回は、当社での品質マネジメントシステム運用の状況とともに、ISO9001とJIS Q 9100について概要を紹介します。
ISO取得の経緯とエピソード
1990年代、世界的にISO9001の取得要求が増え、当社もPratt&Whitney社からB777用エンジントレーラー製造の認証を受ける際にISO取得が条件となりました。
また、航空宇宙・防衛分野の顧客である防衛省様や航空会社様、重工様の案件でもこのISOが必要となります。
こうした顧客の要求にこたえるために、当社はISO取得のための社内プロジェクトを発足しました。
取得に際しては同業者の中でもかなり早い方だったため、社内プロジェクトを中心としたシステム構築には大変な苦労がありました。
初代プロジェクトリーダーは、ホテルに5日間缶詰になって講習を受講しましたが、マニュアルや規定の理解が難解の上、当時は、インターネットでの資料入手が難しく、文章の作成にも苦労したようです。
無事に取得をした後も、第三者機関による厳しい審査を受けて更新する必要があるため、今夏も、第三者機関による定期審査を受けました。
当社では、防衛関連を核とした事業のため、公益財団法人防衛基盤整備協会 (BSK)で審査を行っていただいています。
ISO9001、JIS Q 9100の概要
当社が保持するISOとJISの規格について、簡単に説明をしましょう。
・ISO9001について
ISOとは「国際標準化機構」の略称で、国際標準化機構が制定した規格をISO規格といいます。
この規格は、一定の品質を保った製品やサービスを世界中で提供できるようにしましょうという国際的な基準です。
そのISO規格の中の1つであるISO9001は、会社や組織が提供するものづくり、「製品やサービス」のための品質マネジメントシステム規格です。
・JISQ9100とは
JISとは「日本産業規格」の略称で、上記のISO9001をベースに、航空、宇宙及び防衛分野の製品・設計・開発を提供する組織に対して、特別要求事項を追加したものになります。
安全性を確保するために一般的な製品と異なる厳しい機能・性能・安全性の確保を重視した規格となります。
※国家規格であるJIS規格は、ISO規格を元に翻訳して作られているため、JIS規格に沿った管理をしていれば、ISO規格を守っていることになります。
ISO及びJIS規格認証に行う主な仕事
①不具合の集計、改善など工場の品質管理にかかわる記録の作成・維持
② 毎年のサーベイランス審査(定期審査)、3年ごとの再認証の実施。年2回行う内部監査
の実施、および社内の「内部監査員」の育成
③「品質マニュアル」「工場規定」「室・課基準」など文章の維持・管理を、ISO規格の変更
などに沿って行う
ISOの認証を受けることでのメリット
ISOの認証がないと、顧客は発注先の会社の品質管理状況について個別に調べなければなりません。
ISOの認証を受けることで、第三者(国際規格)が発注先の品質管理状態を保証してくれることになり調べる手間が不要になります。
また、受注側は第三者機関の認証を受けた標準的な品質管理を行うことで、顧客からの品質管理要求に対してスムーズな対応が可能となります。
工数削減でコストダウンにもつながるため、顧客、受注側ともにメリットがあります。
さらに、一定のルールの中で仕事を行うことになるため、属人化を防ぎ、全社員が一定のレベルで作業を進めることが可能となります。
特に多品種少量生産及び修理品が多い当社では、1品ごとに作業工程が異なるため、すべての作業手順をマニュアル化にすることは非常に難しいですが、品質を一定以上に保つためにも徹底して行っています。
ISOの今後の運用や展望について
ISOを運用するにあたり、課題として多くあげられるのが、社員のISOに対する理解の促進です。
ISOの基本的な考え方に「ものづくりを手順化し、安定したより良い品質の製品(サービス)をお客様に提供する」とありますが、この目標を元にISOの規則や手順を個人レベルまでに落とし込むことが必要です。
具体的には、規格に沿った業務フローを基準として、必要な書類及びその承認者と管理方法をルールとして定め、確実に守ることです。
また、ISO9001よりも厳しい航空・宇宙・防衛分野に特化したJISQ9100の取得は、企業としてさらなる品質向上を目指すためです。
これらの規格を軸に、安定した品質及び品質の向上に努めていきます。
一方で、当社の現在の課題は、ISO関連の社内規定ペーパーレス化です。
記録管理用のデジタル保管や省スペース化により検索のしやすさを実現し、ISO規格の確実で正確な運用を促進していきます。
まとめ
ISOを運用することで、それが可視化され、共有されています。
今後も、規格に沿った作業を徹底し、安定した製品の供給に努めていきたいと思います。