2023.7.05

キャリアパレット車の修理から始まった製鉄所内での仕事

今回は、JFEスチール株式会社様の物流機能を担う「JFE物流株式会社様」との仕事について紹介します。
お取引のスタートは、JFEスチール東日本事業所 千葉製鉄所に所在するJFE物流㈱東日本事業所 設備技術部 千葉整備室 車両整備様から、キャリアパレット車の修理を依頼いただいたことでした。
以降、キャリアパレット車以外にも、所内を移動する一般車両の整備・車検など、千葉整備室で管理する設備・機材の点検・整備・メンテナンスの仕事を請け負っています。
また、現在では、千葉だけでなく、倉敷、福山、仙台地区でもお取引をいただいています。

 

 

JFEスチール 千葉製鉄所について

JFEスチール・千葉製鉄所は、東京ドーム170個分(約766万㎡2)の敷地を保有しており、30社あまりの関連企業が所在しています。
一つの町のようにも思えるほどの広さで、所内の道路には信号機があり、交通ルールもしっかりと定められています。
スピード違反等の取り締まりが行われ、運転中の喫煙や飲食は禁止されており、安全対策が徹底されています。

24時間、毎日稼働し続けるキャリアパレット車

JFE物流株式会社の千葉整備室では、製鉄所内のあらゆる設備・機材の点検・整備・メンテナンスなどを管理されています。
その設備の一つに、製造された鉄コイルを運ぶための車両「キャリアパレット車」があります。
千葉製鉄所内にはキャリアパレット車が、200t積載車10台、140t積載車が6台保有されています。


キャリアパレット車の稼働は24時間で、点検・整備で入庫する以外は、毎日休みなく働き続けています。
高炉が、常に鉄の生産を行っているためです。高炉を止めると、炉の内部で溶けていた銑鉄が冷えて固まり、再稼働させるためには、最悪の場合は固まった鉄を爆破しながら砕くか、高炉を解体する必要が出てきます。
設備も巨大なことから、再稼働させるためには工数・コストが大きくかかるため、稼働を止めることはありません。

キャリアパレット車は、次々と出来上がる鉄コイルを、工場から保管場所へ持って行く作業を休みなく行うため、1日中稼働を続けています。
完成した製品を所内のさまざまな保管場所に運びますが、その運搬にかかる時間は片道30分ほどとのこと。所内の広さがうかがえます。

当社が請け負う「キャリアパレット車の整備」

休みなく稼働することが大前提のキャリアパレット車ですから、故障の無いように全台数、車両の整備・記録を行って、頻繁に点検・整備を行います。

 

当社では、キャリアパレット車の車両部品の新規設計製作や修理、整備・メンテナンスに使用する治具や機材、また、部品の保管棚などの製作も行っています。
日々、高重量の車両が行き来する所内の路面は決して良い状態ではなく、走行中の振動などにより車両の痛みが激しいという想定のもと、取り組んでいます。

エンジンオーバーホール

いすゞ、キャタピラー、コマツ、ベンツ、三井ドイツの5種類のエンジンオーバーホールを行っています。
エンジン分解後の加工作業も、社内で作業を完結できることが当社の強みです。
加工内容は以下のとおりです。
・クランクシャフトの溶射肉盛り、加工
・シリンダーヘッドの面研バルブ周りのメンテナンス
・シリンダーブロックの修理・再生(ボーリング、ラインボーリング)
・水圧テスト

 

足回り部品の修理

車両が旋回・昇降するために必要な足まわり部品、アクスルフレーム、アクスルアーム、アクスルシャフト、油圧シリンダーなどの修理メンテナンスを行っています。
走行による負荷で各所が摩耗してしまうため、溶射・溶接肉盛り加工や、軸のピンの製作付け替え、預かり品スケッチ後製図・新規パーツ製作などを行います。

中でも、アクスルシャフトについては、重要周期交換部品として、在庫管理から修理作業を一手に引き受けています。
以前は、お客様のところで分解していただき、部品ごとに修理や新規部品製作を行っていましたが、アクスルシャフトアッセンブリでお預かりし、分解、点検、肉盛り、加工、部品製作、組立、調整全てを行い納品しています。
本作業の移管の際には、基本的な手順や調整方法、使用限度値などお客様から指導していただきました。
お客様からは、「このような作業を協力店社に依頼することで、車両の電気系の故障探求など自社整備社員しかできない作業や、難易度の高い仕事に集中することができ、生産性が高まった」といった話をお聞きすることができました。

 

各種保管棚製作

車両整備工場には在庫部品が多くあるため、保管方法や作業スペースの拡大についても検討しました。
下記部品を保管するための置台を製作しました。
・エンジン
・ターンテーブル
・動輪アクスル
・アクスルシャフト
・遊輪ドラム&ハブアッセンブリ

トラックやフォークリフトで運搬する際に、部品がバランスを崩してしまわないように安全対策にも力を入れて設計・製作しています。
また、積み重ねが可能な設計にしたことで、作業スペースの拡大にもつながりました。

 

専用治具・工具の設計製造

キャリアパレット車で使われているボルトやナットは、通常のサイズとは比べ物にならないほど大きなものです。
そのため、分解には大型の工具が必要となりますが、市販の工具ではサイズが合わないのでオリジナル品を製作します。
当社の設計部門が、車両側のスケッチや使用するレンチやインパクトの確認を行い、使用方法と希望の構造をおうかがいした上で、特殊工具を作ります。
製作した治具、工具、機器については下記になります。
・各種、引き抜き・圧入治具
・リジットジャッキ
・グリースルブリケーター
・各種油圧ジャッキ用アダプター

キャリアパレット車に関するその他の案件について

既存部品の改良型の設計・製作、廃盤部品の図面化・製作、出張作業で溶接・加工・塗装も行います。

一部になりますが、下記のような案件があります。
・マフラー製作
・トリアングルロッド製作
・シートベース製作
・格納ミラーAssy製作
・油圧ユニットのオーバーホール
・ブレーキキャリパー加工及びオーバーホール
・車体塗装

高橋室長より「協力しあえるパートナー企業として」

設備技術部門の起重機整備及び車両整備の責任者である
JFE物流株式会社 東日本事業所 設備技術部 千葉整備室 室長の高橋様に、メッセージをいただきました。


堀口エンジニアリングさんは、キャリアパレット車の足回り部品の溶接肉盛り修理から始まり、設計を必要とする新規製作品、設備まわりの相談も受けてくださっています。
最初は、「修理屋さん」というイメージでしたが、何気ない会話の中で困りごとを話していると、「うちでやってみましょうか? 工場に相談してみますよ」と、何かしらのアクションをとってくれました。
キャリアパレット車に関して、運行中のトラブルは即日対応が基本ですが、昼夜休日問わずできる限りの対応をしていただき非常に助かります。
トラブルもありますが、その後の対応がすばやく、また、新しい案件にも挑戦してくれます。
堀口エンジニアリングさんとは、いい意味で会社間の垣根がなく相談しやすいです。
厳しい要求をすることもあると思いますが、互いに支えるパートナー企業としてお付き合いしていきたいと思っています。

まとめ

当初、修理屋さんというイメージが強かった当社ですが、車両トラブルでの緊急依頼に素早い対応をしたところ、「堀口エンジニアリングさんは、何ができるの?」と相談いただき、そこから、さまざまな仕事につながっていきました。
また、5Sを意識した取り組みの依頼も増え、キャリアパレット車以外にもクレーン設備の修理や部品O/Hへと拡大。さらには、倉敷・福山・仙台地区と多方面から依頼をいただいています。
鉄道関連・信号機のメンテナンス等の作業も行い、作業領域の拡大は今でも続いています。
一部ですが、下記のような仕事も行ってきました。
・ガントリークレーンの整備・メンテナンス
・取り外した大型部品の置台製作・大型発電機の整備・オーバーホール
・コイルリフター置台製作
・所内移動用車両の販売

さまざまな案件に対応できる理由として、当社には、設計、溶接、機械加工、組立と一貫した作業が行えることがあります。
例えば、溶接修理でお預かりの製品を、スケッチして製図を行い、予備部品として新規製作するというようなご依頼も多くあります。
今後も、強みを生かした一貫体制と技術力で、お客様の声に的確にこたえていくようお約束いたします。