お役立ち記事

造船、84カ所の穴を補修する出張加工をしてきました。

造船所への出張作業の紹介

当社では造船所へ出張修理はもちろんのこと、新造船に対しての加工も行います。
下記、造船関連の作業内容を一部ご紹介致します。
・ウォータージェット取付面の溶接後の熱による面歪み取り加工
・砲台、大型設備の取付フランジ面腐食などの面出し
・プロペラ軸受けのラインボーリング
上記をメインに依頼を頂きますが、今回ご紹介する船内での穴補修作業のような様々な領域の作業も得意としています。

現地下見で想定された治具を制作

1月6日、現地作業の下見に北海道・函館へ行きました。
函館は、北海道中心部や北と比較すると、寒さや雪の影響が少ない地域で、雪がちらつく程度での環境下で下見を行いました。
下見は、現地加工場所の作業環境により、使用する加工機や持って行く機材の選定を行う為に、特に加工対象物が初めての物である場合には必ず行う大切な作業です。
いくつか、確認事項についてご紹介いたします。
・加工対象物やその周囲の確認
・電源やエアーコンプレッサーが現場にあるか確認
・加工工期の調整
(場合によっては、加工場所の下準備をお客様に依頼することもあります。)

今回の作業場所で難関となるのは、作業場所の狭さでした。
使用する機材のアトラエース(以下、アトラ)は、通常の使用方法では、送りハンドルを回すことでアトラ垂直下方向に上から下へ刃物を送り加工します。
  

今回は加工対象物の裏側の加工を行います。
ここで問題になってくるのが、刃物を固定するドリルチャックがテーパー型ドリルチャックとなっているため、今回の加工方向だと加工中のチャックに対して抜ける方向に力が加わりチャックが外れてしまいます。
この問題に対して、ドリルチャックが外れないように抑える治具を製作し、出張加工に挑むことになりました。
(アトラへのドリル装着方法は、ドリル及びアトラ共にテーパー形状となっておりくさび効果により締結されます。)

大荒れの天気の中の移動

1月15日、羽田空港から函館空港に着く便での移動でしたが、搭乗前に「函館空港が吹雪により、着陸が困難」との放送がありました。
一応、予定通り出発し、現地付近で千歳空港へ航路変更、または、羽田に引き返すことが検討される状況になりました。
千歳空港に変更になった場合、現地まで車で4時間かかってしまう上に、レンタカーを再度手配する必要がでてきます。また、引き返すことになれば、お客様との日程再調整が必要になるため、離陸後は落ち着かない時間を過ごすことになりましたが、無事、函館空港に到着しました。
函館空港から作業場所である函館造船所へは、距離にして15km。レンタカーを借りて移動しました。
道中、吹雪で前が見えず、側道には雪の壁ができて、普段は二車線ある道が一車線になった状態。慣れていない雪道ということもあり、慎重に運転をしていきました。

車には、先に発送していた加工機材以外の装備品や治具等を積んでいましたが、ドック内は車両が入れないため、駐車場から現場まで、吹雪の中を20分ほど手持ちで運びました。

厳寒の中の加工作業

出張作業を行った1月15日~28日の2週間は大寒波で、現地の方も驚くほどの悪天候でした。そんな厳寒の中での、作業となりました。

8:30~17:30までが作業可能な時間ですが、昼間でも0℃という非常に厳しい環境。
作業は、船内エンジンルームでの、84カ所の取付穴裏座繰り、ビート除去、面取り加工を、狭い作業スペースに体をねじ込み横になって行います。

加工途中に刃物(バイト)を冷やす必要があり、普段は水を使用しますが、水道水は凍っていて水が出ないため、200×300mm程度のタッパに雪を詰めてバイトを冷やしました。
北国ならではの方法ですが、非常によく冷えて効率的でした。

成田工場との連携でトラブル対応

アトラのドリルチャックを抑えるために事前に製作した治具で加工を進めていく中、下見で想定した治具の長さでは足りず、最後の仕上げの加工までできないことが判明。
すぐに、成田工場へ連絡し、さらに長い治具の製作を依頼しました。
その間、現状の治具でできるところまでの作業を行い、お客様から指示いただいた工期通りに終わらせるために、再度スケジュールを組み立てました。
後日、成田工場で製作した新しい治具が到着して、作業が進み、無事、工期通りに完了しました。


このようなトラブルが起きないよう、下見を行うのですが、作業場所によって環境が変わるため、万全な準備を整えることが難しいのが出張作業です。
不測の事態が発生した場合には、工場全体で問題解決に向かいます。

地方出張ならではの体験

作業終了後には、現地でしか食べることのできないラーメンや、有名なラッキーピエロのハンバーガー、ジンギスカンなどを食べました。しっかりエネルギーを蓄えて、厳しい状況下での作業に日々、挑みました。こうした現地ならではの楽しみをみつけることも、中長期にわたる出張作業のモチベーションを高めるコツでもあります。