「山車の操舵性、どうにかならない?」
古くから地域に根ざした伝統行事である祭礼。
その華やかな舞台を彩る山車は、地域の誇りであり、人々の心を一つにするシンボルです。
しかし、長年の使用による老朽化や、現代の道路事情に合わなくなった操舵性の問題など、山車にはさまざまな課題がつきまといます。
そのような悩みを解決するのが、千葉の成田に自前の工場を構え、製造業特有の様々な難題に一気通貫で取り組む堀口エンジニアリングです。
金属加工をはじめとして様々な製品のオーダーメイド対応を得意とする工場が、伝統的な山車修理に挑戦し、その卓越した技術力で地域社会に貢献しました。
今回は、堀口エンジニアリングが手掛けた山車修理事例を詳細に紹介します。
2024年8月、鉾田市新町地区協会様より、鉾神社夏季例大祭で使用される山車の改良を依頼いただきました(山車の修理は今回で2回目になります)。
新町地区協会様の抱えている課題にはこれらがありました。
伝統的な山車の車輪と車軸は、金属同士が直接接触するメタルタッチ式が主流です。
長年の使用により接触面が摩耗し、摩擦抵抗が大幅に増加。
山車を引く際の負担増大は深刻な問題となっていました。
特に坂道での運行は危険を伴い、祭りの安全性を脅かす要因にもなりかねません。
摩耗による抵抗増加は、山車の操舵を困難にするだけでなく、予期せぬ挙動を引き起こす可能性も高めます。
運行ルートには、曲がり角や傾斜など、繊細な操作が求められる箇所が多数存在します。
操作性の悪化は、山車運行の安全性に深刻な影を落とす要因でした。
少子高齢化の影響は、祭りの担い手不足という深刻な問題を引き起こしています。
山車を引く若年層の減少は、祭りの存続そのものを危うくする可能性も孕んでいます。
山車の操作性悪化による引手の負担増加は、この問題をさらに深刻化させる要因ともなっていました。
鉾神社夏季例大祭の開催日は変更不可能であり、修理完了は祭りの成否に直結する最重要課題でした。
限られた時間の中で、高品質な修理・改修を実現するという厳しいミッションが課せられました。
金属加工を得意とする堀口エンジニアリングにとって、木材を主体とする山車の修理は未知の領域への挑戦でした。
しかし、私たちは「祭りを未来へ繋げたい」というお客様の強い想いに共感し、持てる技術と知識を総動員することを決意。
鉄工技術と木工技術の融合という、前例のない試みに挑みました。
メタルタッチ式からベアリング式への変更は、車輪の回転抵抗を劇的に軽減する画期的な解決策です。
これにより、山車を引く際の負担を大幅に軽減し、少ない人数での運行を可能にしました。
長年の使用で摩耗した車輪は、単なる形状の修復だけでなく、材質の劣化にも配慮した緻密な修理・改修が必要でした。
木材の特性を熟知した専門家の協力も得て、精密な修復作業を実施しました。
分解調査の結果、車軸内部の部品にも劣化が見られました。
強度と耐久性を確保するため、最適な部材を選択し、堀口エンジニアリングならではの特殊な技術を用いた補修・補強を行いました。
まずは山車の状態を詳細に調査しました。
図面が存在しないため、構造を理解しながら慎重に分解作業を進めました。
この分解作業の段階で、車軸内部に木材と鉄が複雑に使用されていることが判明。
金属と木材の複合構造という、当初の想定を超える複雑な修理が必要となることが判明しました。
ベアリングを組み込むための車軸加工は、ミクロン単位の精度が求められる作業です。
高度な技術力と最新鋭の工作機械を駆使し、誤差を最小限に抑えた精密加工を実現しました。
車軸内部の木材部分への影響を最小限に抑える工夫も凝らしました。
伝統的な木工技術に配慮しつつ、最新の鉄加工技術を融合させ、摩耗した車輪・車軸を丁寧に修復。
木材の乾燥や収縮といった特性をも考慮した、長期間の耐久性を見据えた修復作業を行いました。
分解した山車を元通りに組み立て、車輪と車軸の動きを微調整。
スムーズな回転と安定した走行を確保するための入念な調整作業は、熟練の技術者たちの経験と勘が活かされました(分解と組み立ては同一の作業者が担当:細かな力加減や勘所は分解した者にしかわからないため)。
幾多の困難を乗り越え、祭開催の3日前に無事に納品。
改良された山車は、期待を大きく上回る成果をもたらしました。
以前は6人がかりで引いていた山車が、1人でも楽に操作できるようになったのです。
この劇的な変化は、担い手不足という深刻な課題の解決にも大きく貢献し、祭りの未来を明るく照らし出す希望の光となりました。
新町地区協会様からは、
といった喜びの声が寄せられました。
また、他地区からも問い合わせをいただいており、今後、堀口エンジニアリングの技術が地域全体の祭り文化の活性化に貢献していくことも期待されます。
堀口エンジニアリングは、山車修理を通して、地域社会に貢献できたことに喜びを実感しています。
山車修理は単なるビジネスではありません。
地域の歴史と文化を守り、未来へつなぐ社会貢献活動でもあります。
堀口エンジニアリング株式会社は、今後も地域に根ざした活動も展開していきます。
山車修理は、当社が持つ多様な技術力の一端を示す好例です。
金属加工、機械設計、そして今回のようなハイブリッド部材などの特殊な案件にも対応できる柔軟性を武器に、お客様のあらゆるニーズにお応えします。
堀口エンジニアリングの技術力の一端
今回のプロジェクトは、若手社員にとっても貴重な経験となりました。
伝統的な技術に触れることで、技術者としての視野を広げることができたのです。
今後も人材育成の観点から未経験ジャンルにも挑戦し、より高度な技術力を持つ技術者を育成していきます。
堀口エンジニアリングはこれらのフルオーダーメイドな製品に国内外から定評があります。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
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そう思っていただけるような、頼りがいのある企業を目指しています。
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