2024.09.19

墜落防止・転落防止の安全対策                     安全設備装置「墜落防止システム」の製作事例

1完成品

製造業を始めとするさまざまな企業では、労働災害事故を防ぐための安全対策を重視しています。
今回は、航空機用整備作業台の製造実績で培った技術と職人技で、お客様のご要望にお応えした「墜落防止システム」についてご紹介します。

安全な作業環境づくり

昨今、製造現場を始めさまざまな企業では、労働災害事故防止のための安全対策に余念がありません。
工場など作業場にはさまざまな機械や設備、重量のある資材があり、ひとたび事故が発生すれば人命にも直結します。
労働災害には、
 ・はさまれ、巻き込まれ
 ・転倒
 ・切れ、こすれ
 ・墜落、転落
などがありますが、中でも極めて重大な事故につながるのは「墜落・転落」です。

今回、長年の得意先様で、クローラクレーン等の製造、修理、販売を手がける住友重機械建機クレーン株式会社様(以下、HSC様)より「墜落防止システム」の製作依頼がありました。
墜落防止システムとは、アンカーシステム、フォールアレストシステムなどと言われる、高所からの作業者の落下、墜落を防止する装置のことです。万が一、高所作業中に作業者が墜落した場合でも、落下距離を最小限に抑え身体への衝撃を軽減することで、重大なケガや死亡事故を防ぐための安全装置です。
HSC様ではクローラクレーンのメンテナンスを始め高所での作業が多く、危険な事例もあったため、「墜落防止システム」を製作し安全対策を講じたいとのご要望でした。
海外製の同様のシステムもあったそうですが、仕様も異なり、金額的にも導入にハードルがあったことから当社にお声がかかりました。

お客様のニーズに合わせたオーダーメイドの設計

HSC様より「クレーンのボディ、伸縮するブームのアタッチメント部分など、どこにでも設置して使用できる墜落防止システム」の製作依頼を受け、及川工場長、営業・石井、設計・萬崎、溶接・後藤、組立・竹田をはじめとするチームが結成されました。
「可動式にしてほしい」、「乗り降りするための足場が欲しい」、「昇降式にしたい」など細かい要望をお聞きしながら、構想、設計、 調整を重ね、実際に製作を始めるまでに1年近くを費やしました。
当社は、航空機用整備作業台の製造実績は数多くあり、そのノウハウは持っていましたが、「墜落防止システム」は初めて手がけるため、営業の石井と設計者の萬崎は製品がどのようなものなのか、強度はどの程度か、材質は何が良いのか…など、国内外のあらゆる資料を集め情報収集するところからスタートしました。
当社最大の航空機地上支援器材(GSE)「尾翼整備作業台」はこちら
 

設計に際しての3つのポイント:ニーズに対応する強みを発揮

墜落防止装置と作業台の一体化
 作業台や足場がついた墜落防止装置は類をみないと言ってもよく、一から設計

昇降式作業台の強度と軽量化の両立
 6mの長さに及ぶ昇降式作業台は、強度を確保しつつ軽量化することが大きな課題。
 綿密な強度計算と構造解析に基づき、部材の最適化、溶接方法の工夫などを行い、
 軽量ながらも高い強度を持つ作業台を実現

電源不要の手動昇降システム
 屋外で使用するために電源不要、手動式の昇降システムを採用

などがあり、HSC様とすり合わせを重ね、ひとつずつ問題をクリアしていきました。

HORIGUCHIの腕の見せどころ 

HSC様に図面の承認をいただき、いよいよ製造工程へ。
ここまで大きな製品では溶接の作業が重要になります。
6mもある作業台をつくるには複数枚の定板を溶接してつなぎ合わせる必要があり、材質や溶接の特性を鑑みつつ、ガタ、ずれ、曲がりを修正しながら歪みのない平らな作業台をつくっていきます。溶接担当の後藤は、「溶接と冷却を繰り返しながらミリ単位の歪みを修正していく作業は、長年の経験と勘が不可欠」と語ります。
培った技術や経験を活かし、勘を働かせながら作業する、いわゆる職人技も堀口エンジニアリングの強みです。
一方、こういった職人技を言葉で伝えるのは難しく、当社は
DXを用いた後進への技能伝承の取り組みにも力を入れています。

4クレーンに設置(作業台)溶接を経て図面通りに部品や材料を揃えた後は組み立て作業に入ります。
システムの高さは最大で6m程あり、脚立や高所作業車を使って組み立てました。
材料を揃え組み立て作業を終えるまで2ケ月でしたが、航空機用整備器材のノウハウを生かし予想以上に短期間で完成させることができました。
組み立て後は、人に見立てた120kgの鉄の塊を使って荷重試験、落下試験を行い安全性も確保。試験を終え無事に製品のご承認をいただき、先頭に立ってチームを率いた竹田も安堵しました。
いったん分解して塗装を施し、HSC様に搬入して、現地で再度組み立て納品を完了しました。2組み立て中(加工後)こうして、HSC様の「墜落防止システム」初号機は、お客様とともに作り上げた唯一無二のシステムとなりました。
ありがたいことに初号機に続くご依頼も検討していただけるとのことで、私たちの技術力とサービスを信頼していただけた証と思っております。         
3クレーンに設置(人あり)加工後5クレーン設置-1

HORIGUCHIの経験、実績が実現するもの

国内外において、安全対策、安全装置の導入は確実に増えていくと思われます。
また法令基準もますます厳しいものになっていくでしょう。
墜落防止をとってみても労働安全衛生法の第21条第2項目では、「事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。」とあります。
中でも製造業においては、労災事故を未然に防ぎ従業員の安全を守る職場環境づくりは最重要課題であり、結果、品質や生産性の向上にもつながります。

今回のHSC様の事例のように、堀口エンジニアリングは培った技術と実績を生かし、お客様が求める規格、仕様に合わせたオーダーメイドの製造や改修を得意としております。
お客様の製品を通じて、安全を守り社会に貢献することが、私たちの使命です。