プロジェクト事例

当社最大の航空機地上支援器材(GSE)「尾翼整備作業台」

作成者: 堀口エンジニアリング編集部|2023.06.12

当社は、防衛・重工・航空・宇宙関連会社を客先とする航空機地上支援器材(GSE)について、設計開発から製造を行っています。
今回は、当社の航空機地上支援器材の中で最も大きい「尾翼整備作業台」を紹介します。

この「尾翼整備作業台」は、航空自衛隊の空中給油機である「KC-767型」及び「KC-46A型」の尾翼まわりの点検・整備を行うものです。
高さ17m、長さ17m、幅23m、と当社最大の大きさです。
作業台は、左右に離れた状態から真ん中に向かって走行し、航空機の尾翼部を挟み込むことができます。
作業員が機体の近くで作業を行えるようにスライドフロアを設置しています。

さまざまな整備作業台を製作

当社では、TAIL STANDや整備作業台などの大型の整備作業台の製作実績があり、自衛隊の各部隊に納品しています。
尾翼整備作業台は、2007年に「空中給油機KC-767型」を納品しました。
大型構造物であるため、設計・開発から製作まで難易度が高く、また材料証明など技術資料の提出書類が必要となる案件となります。

2022年に、「空中給油機KC-46A型」尾翼整備作業台を納品。前回の「KC-767型」尾翼整備作業台をベースとして、改良点を網羅し、さらに完成度の高い製品を目指して、下記について図面改定を行いました。
・お客様の要求に対する仕様変更
・実用性向上による設計変更
・製作・現地組立の容易化で工数削減
・部材・購入品等の低コスト化

尾翼整備作業台は、大型構造物であるため、協力会社様と連携して製作を行います。
協力会社様向けに仕様書を作成し、現場監督やスケジュールマネジメントを行うことが、当社の主な作業となります。
当社が長年培ってきた航空機地上支援器材の製造に関するノウハウを共有し、円滑なコミュニケーションで、より良い製品の完成を目指しました。

尾翼整備作業台の特徴

「空中給油機KC-46A型」尾翼整備作業台の特徴は下記になります。

①6階建ての作業台

航空機の尾翼まわりの点検・整備は、水平尾翼、昇降舵、垂直尾翼、方向舵などの、付け根から先端までを行います。
そのため、垂直尾翼の高さに合わせた作業台が必要となります。
また、点検範囲が広いため、2~6階の作業フロアを設けることで、尾翼まわりを全面的にカバーする構造となります。

②モーター駆動でレール上を走行

作業台は、左右に離れた状態から真ん中に向かって走行し、航空機の尾翼部を挟み込こんで使用します。
その際の可動はモーターによる駆動で行われ、格納庫床面に設置されているレールの上を走行します。
レール上を走行することにより摩擦抵抗が減らせることから、モータの容量が小さく抑えることが可能となり電気使用量が低減できます。

③荷物専用のエレベーター設置

大型の部品や作業工具等の持ち込みの際に使用します。
作業員が階段で持ち運びした場合に、航空機部品を傷つけたり、落としたりする危険性を回避するために必須の装置です。

④スライドフロアの改良

前回からの大きな改良点として、スライドフロアにスライドレールを使用しました。
スライドフロアは、整備する際に、機体と作業床との隙間を小さくする可動式の作業床のことです。
スライドフロアを展開・収納するためには、チェーンを介し、ハンドルを回す作業が必要です。スライドレールを使用することで、ハンドルを回す力が少なくなり、操作性が向上しました。
スライドフロアを展開することにより、機体と作業台との隙間を埋め、機体や点検口へのアクセスを容易にしています。

⑤エア取り出し口とコンセント、LED作業灯

各フロアに、エア取り出し口、及び、100v電源コンセントを設置。エアツールや電動工具の使用が可能です。
また、作業灯はLEDに変更し、省電力及び明るさの向上で作業性にも効果を発揮します。

スムーズな現地設置の工夫

尾翼整備作業台は、大型の構造物となるため、製作したパーツを現地に持ち込んで組立て完成させます。
2007年に納品した際は、スライドフロアの作動調整に手間が掛ったため設計を再検討。
ゆがみが出ないように、引き出しと枠を一体化して工場で製作し、作業台に装着するように変更しました。
これにより、現地で行う作業は、一式となったスライドフロアを組立するのみでスムーズに作業を終えることができました。

点検での部品交換に迅速対応

作業台の使用頻度は月1~2回で、定期点検は年1回の実施となります。
点検内容は、外観目視確認、取付状態の確認、チェーンの確認、動作確認など多くの項目があります。
これらを全て検査し、経年劣化部品や交換部品を拾い出し、お客様の検査官に確認していただきます。
後日交換部品を準備し、再度現地で部品交換し作動確認を実施します。

まとめ

当社は、尾翼整備作業台だけでなく、油圧シリンダーを使用したシザース構造で昇降する作業台や、20フィートコンテナに収まる1.4mから4.5mまで昇降する作業台など、さまざまな使用用途の作業台を製作しています。

一般的に、製造品は、試作品をいくつか製作して製品を完成させていきます。
初回で完成度の高い製品を作ることは、難易度の高いことですが、当社は常にオリジナル製品の設計・製造をしてきたので、試作品をつくらない製品づくりの経験が豊富にあります。
その知識や技術をもとに、お客様の課題解決に向けて最適なものを提案いたします。